2つの新エネルギーの社会実装に向けて、
前に進んでいく実感。
米州住友商事グループ
米州エネルギーイノベーション・イニシアチブ
畑谷 明歩
この記事のサマリー
1. リスクマネジメント業務の経験から、「自分でも案件をつくり出してみたい」と思いが膨らみ、営業部門へ異動。
2. 新組織「EII(エネルギーイノベーション・イニシアチブ)」の発足に伴いアメリカに駐在。バイオマスエネルギーと核融合エネルギーの事業開発に取り組む。
3. 正解のないビジネスの難しさとやりがい。目の前の事業を必ず成功させたい。
- Profile
- 2015年に入社後、メディア生活関連総括部にて、食料事業や生活資材事業のリスクマネジメントに従事。入社4年目からはバイオマスエネルギー開発部へ異動し、発電用燃料のトレーディングを担当。現在はアメリカに駐在し、2つの新エネルギーの開発に挑む。
※所属およびインタビュー内容は、取材当時のものです
これまでの仕事
「自らの手で案件を生み出したい」
そんな思いから、営業部門に挑戦。
——入社当初のメディア生活関連総括部ではどのようなお仕事を?
メディア生活関連総括部はリスクマネジメントを担当する部署だったのですが、入社1、2年目のときはバナナや穀物などを扱う食料事業を担当していて、3年目ではバイオマス発電に使う木質ペレットという燃料のトレーディングを担当していました。営業部門とは別の視点からより良い案件にするためのサポートを行うのがリスクマネジメントの役割です。
——その後、ご自身の希望でバイオマスエネルギー開発部へ異動されたそうですね。
リスクマネジメントとして営業の仕事をサポートしていくうちに「自分でも案件をつくり出してみたい」という思いが膨らみ、営業部門への異動を希望しました。なかでも、バイオマス分野は年々需要が伸びていたこともあり、新たなお客様の獲得を目指す過渡期でもあったので、そこに自分も参加したいと意志を伝えました。
——異動後はどのような仕事をされていたのですか?
木質ペレットをアメリカやカナダ、ベトナムなどから輸入し、日本の大手電力会社に販売する業務で、私が異動したときはまさに10年単位の長期契約交渉のタイミングだったので、サプライヤーとお客様との間に立ち、価格や取引条件の交渉を担当しました。
重要なタイミングに関わることになりましたが、リスクマネジメント時代の上司から「主体的に仕事に取り組む」姿勢を教わっていたので、常にお客様が求めていることを先回りして対応することで、信頼関係をつくることができたと思います。
ほかにも、出資先の海外のペレット製造工場の事業運営として、オペレーションや業績の管理にも携わることができました。
現在の仕事
カーボンニュートラルを実現するバイオマスエネルギーと核融合エネルギーの事業開発に取り組む。
——そして現在は、EII(エネルギーイノベーション・イニシアチブ)という新しい組織にいらっしゃるそうですね。
EIIは、カーボンニュートラル社会の実現に向けた次世代事業創出をテーマとした新たな営業組織です。海外組織の新設とほぼ同時期にジョインし、現在はニューヨークで勤務しています。日本にいたときから海外への出張や海外の方と働く機会はたくさんあり、「いつか海外に行きたい」という思いはあったので、希望が叶った形です。ただ、住友商事が今後力を注いでいく領域だけあって、求められる仕事の質や量には高いレベルが求められていると思います。形式としても、トレイニーではなく駐在員して送り出してくれた会社の期待も感じていますので、それにしっかり応えたいと日々邁進しています。
——そのなかで、バイオマスエネルギーと核融合の2つに取り組まれていると?
バイオマスエネルギー事業では、従来の化石燃料由来ではない持続可能な航空燃料であるSAF(Sustainable Aviation Fuel)の事業開発に取り組んでいます。航空業界の脱炭素化を目指すといった方がわかりやすいかもしれません。ただ技術面を含め課題も多い新しい産業になるため、まだ一部の製造技術を除き商業化されていないのが現状なのですが、アメリカで2022年に成立したインフレ抑制法のなかで、クリーンエネルギーの開発に対して大規模な予算が盛り込まれたこともあり、各社がしのぎを削って事業開発に乗り出しています。住友商事としても技術やコスト、サプライチェーンの安定性など、あらゆる観点から判断材料を集め、投資先を検討している段階で、2030年までにSAFの製造工場を立ち上げることを目指しています。
——核融合エネルギーについても新しい分野になりますね。
核融合エネルギーでは、2022年にTAE Technologiesというアメリカのスタートアップに出資を行いました。この会社は放射性廃棄物を出さない核融合発電技術を開発しており、成功すれば世の中を変える画期的な技術となります。現在は実験段階ですが、商業化に向けたマイルストーンの管理や将来に向けた準備を支援しています。TAEは核融合発電の実現のために必要となる技術開発に取り組んでいますが、多岐にわたる革新的技術の開発を同時並行で進める必要があり、多くのパートナーを必要としています。日本には核融合発電に必要となる高い技術を持つ会社が多くありますので、そういった会社との橋渡しを住友商事が支援することで、事業化に向けた取り組みを進めています。また、将来の発電所建設においても、サプライチェーンの構築や各機器の調達等、様々な産業・事業に携わる住友商事だからこそ出来るビジネスを通じたサポートを実現していきたいと思っています。
仕事の社会的意義とおもしろさ
新しく正解のないビジネス。
思い描く最高のストーリーを目指して。
——担当されているバイオマスエネルギーも核融合エネルギーもまだまだ先が長いビジネスになりますが、どういった思いで取り組んでいるのでしょうか?
先が長いことは間違いありませんが、社会に大きなイノベーションを起こす可能性があり、世界的な注目度も高いビジネスです。それだけに日々新しい情報が入り、1歩ずつ前に進んでいる実感もありますので、モチベーションにもつながっています。正解のないビジネスをつくり上げる難しさを実感する一方で、確立されていない分野だからこそ若手のアイデアも採用されやすいところがあります。日々の打ち合わせでも、自分の意見が受け入れられる場面が多々あり、そういったところもやりがいにつながっています。
——最後に、これからの目標を教えてください。
現在、検討開発中の新規案件が複数ありますが、私がアメリカに駐在している数年の間にどれか一つでも案件を投資実行段階に進めたいと思っています。あとは、担当案件のチームリーダーになることも目標です。部下を巻き込みながら先頭に立ち、ミッションの達成を目指していきたいです。私が現在関わっている事業のなかで投資を実現し、その投資先の事業会社の経営に携わることができたら、最高のストーリーです。
畑谷 明歩が答える
5つのQ&A
Q1 入社後に驚いたことは?
「ラーメンからミサイルまで」と言われるほど多様な事業領域を持つ総合商社ですが、まさに今、それをかなり実感しています。「バナナから核融合まで」やっていますからね。
Q2 過去のどのような経験が、今のあなたをつくっていますか?
入社以来3年間、リスクマネジメントに携わったことで、各案件を進める上で確認すべき論点や注視すべきリスクについて学びました。また、木質ペレットのトレーディングでは、ものを扱う商売の流れと、お客様や取引先への接し方を学び、商社パーソンとしての基礎が身についたと思います。
Q3 尊敬している社員はどんな人?
自分の領域に関して、誰よりも勉強し、豊富な知識を持っている人です。現在の上司や先輩がまさにそうでした。尊敬する方々に追いつくために日々勉強し、知見を蓄えているところです。
Q4 仕事でつらい時、どうやって乗り越えている?
自分で考え込まずに、周りの先輩や同僚に相談します。あとは、大好きなアーティストの曲を聴いてリフレッシュ。仕事終わりに同僚と飲みに行って息抜きすることもあります。
Q5 プライベートの過ごし方は?
私の駐在に合わせて、夫がニューヨークに帯同してくれているので、休日は夫や同僚、現地で知り合った友人と観光に出かけたり、スポーツを楽しんだり、素敵なお店を開拓したりと、楽しく過ごしています。
とある1日
- 9:00
- 出社、メールチェック
- 10:00
- 取引先との打ち合わせ
- 11:00
- ドキュメント作成
- 12:00
- 昼食
- 13:00
- チームメンバーとの打ち合わせ
- 14:00
- 資料作成
- 16:00
- クライアントとの打ち合わせ
- 18:00
- 帰宅、夕食
- 20:00
- 日本との打ち合わせ