母子だけでの海外赴任。
挑戦したからこそ味わえた、
この上ない充実感。
欧州住友商事グループ 欧州金属部門
井坂 紀子
この記事のサマリー
1. ノルウェーに駐在し、現地と日本をつなぐエネルギー鋼管のサプライチェーンを運営する。
2. 子どもたちを連れて海外赴任。「挑戦したい」という思いが、自身を突き動かした。
3. あきらめずに挑戦したからこそ得られたやりがいや充実感。
- Profile
- 2007年に入社後、エネルギー業界向けの鋼管トレード、鋼管事業企画・開発に携わりながら、2度の産休・育休を経験。現在は欧州住友商事に出向し、子どもたちを連れてノルウェーに駐在。ゼネラルマネージャーとしてチームを牽引する。
※所属およびインタビュー内容は、取材当時のものです
現在の仕事
日本製のエネルギー鋼管を
現地へ供給するための
サプライチェーンを構築する。
——現在はノルウェーで、エネルギー事業者向けの鋼管のサプライチェーンを運営しているそうですね。
石油ガス掘削用の鋼管や、採掘現場で二酸化炭素を回収・活用するための鋼管などを日本のメーカーから仕入れ、現地でのサプライチェーンを通し供給しています。ノルウェーで製品を販売するにあたり、300億円以上に上る在庫の管理を行ったり、現地のベンダーと協業して鋼管を検査・加工するといったサービスも展開しています。一口にサプライチェーンと言っても、ノルウェーは特に安全・環境・サステナビリティの基準が厳格な国なので、子会社含むチーム一丸となって細かいオーダーに対応しています。
——井坂さん自身は、ゼネラルマネージャーを務めていらっしゃいますが、普段はどのようなお仕事をしていますか?
私の部署には10名のメンバーがおり、加えて事業会社に30名在籍しており、各人それぞれが役割を担っています。在庫状況、物流や加工の状況を現場及びシステム上で管理したり、ベンダーとの折衝、客先への技術コンサルティングなどさまざまですが、そうしたメンバーのマネジメントを通じて事業を推進しています。私がお客様に対応して外国へ出張することもあります。一番多いのは仕入れ先がある日本ですね。お客様とともに製造現場へ行って打ち合わせをしたりします。ノルウェーのお客様が海外に進出する際に、一緒に現地へ行くケースもあります。
住友商事で働くことの魅力
不安もあった母子での海外赴任は、
充実した日々に。
——2人のお子さんを連れてノルウェーに駐在されているそうですね。当初から不安はなかったですか?
海外赴任の打診を受けた時、子どもは3歳と6歳でした。「ママが行くなら私も行く!」という感じで子どもたちは乗り気で、夫も、私のキャリアにとって良い機会だろうし、子どもに海外経験をさせられる機会だから、と応援してくれました。私はというと、これまで日本で担当してきたマーケット・客先の最前線、現場に立てることにワクワクしていました。自分だけで新しい環境に暮らす子どもたちをケアしきれるだろうか、子どもたちが新しい生活環境に慣れるかどうか、と心配はありましたね。ただ、不安よりも「この仕事に挑戦したい」という思いの方が大きかったです。
——実際にノルウェーに駐在してからは、どのように過ごしてきましたか?
会社のサポート制度(※)を活用してベビーシッターを雇ったり、私の両親を日本から呼び寄せるなどして、仕事と家庭を両立してきました。両親がいる間に、宿泊を伴う出張を入れるよう工夫もしています。子どもたちはすぐにノルウェーでの暮らしに慣れてくれたので助かりました。子どもを通じて知り合ったママ友のなかには、私のような駐在員もいて、お互いに助け合いながら暮らしています。私の子どもたちを預かることもあれば、逆もあり、退社後に子ども4人の世話をするという日もあります。
- ※配偶者を国内に残留し、子のみ帯同する場合、保育費等(サポートのための呼び寄せ費用やベビーシッター代等)を会社が補助するもの。
——振り返ってみて、お子さんを連れての海外赴任はどうでしたか?
事業運営と子の成長、どちらも一番近くで見続けられることに充実感を感じています。この上ない経験をさせてくれた住友商事にはとても感謝していますし、こういった体験を是非広げていきたいと思います。それから、これは日本で働いていても同じことかもしれませんが、効率よく仕事と家事・育児ができるようになりました。特にノルウェーは残業をしない文化があるので、より効率への意識が高まりましたね。苦労した点でいえば、やはり自分一人で家事・育児をすべて担うことになるので、プレッシャーはあります。とはいえ、子どもたちも成長してきたので、積極的に家事を手伝ってもらうようにしています。子どもたちも少しずつたくましくなりました。
仕事の社会的意義と面白さ
多様性あるチームを運営するなかで発見した、
新たなやりがい。
——エネルギー分野という中で、社会的な責任も大きいのではないですか?
ヨーロッパのエネルギー供給の一端を担い、そこで暮らす人々の生活を支えている実感は日々感じています。それから、取引先とともに社会課題の解決に取り組む機会もあります。その1つが「サプライチェーンにおける人権保護」です。石油ガスの採掘現場や物流現場において働く方々の人権を保護する取り組みを、客先であるエネルギー会社と共に行っています。日本で働いていた頃は見えていなかった世界を目の当たりにすることもあり、社会や未来をより良くするためにできることをしたいという思いが大きくなりました。
——現在のチームにはさまざまな国籍のメンバーが集まっているそうですが、マネージャーとしてどのようなことを意識していますか?
チームには私以外にもう一人日本人からの派遣員がいますが、それ以外はノルウェーで暮らすさまざまな国籍のメンバーです。そういったチームを運営するために大切にしてることは、まず相手の話を聞くこと。一人ひとりにストーリーがあるので、傾聴して相手を知ることを意識しています。そして、相手の背景にあるその国の文化を知ることも大切です。ノルウェーと日本はどちらも平和な雰囲気の国ですが、働き方や家族に対する考え方は異なりますし、法律も異なります。リーダーとしてチームを運営することのやりがいは、ノルウェーに来て実際にやってみるまで、知りませんでした。子どもだけを連れて海外で働くことも、その環境でマネージャーを務めることも、すべてあきらめなくてよかった。挑戦したからこそ、今こうして充実した日々を過ごせていると感じます。
井坂 紀子が答える
5つのQ&A
Q1 入社した理由は?
働きながら自分のスペシャリティを見つけたいと思い、さまざまな可能性がある総合商社を志しました。
Q2 会社の雰囲気を一言で言うと?
社内にあらゆる分野のプロフェッショナルがいます。そうした人たちがチームとなって大きな仕事を動かしているので、足りない知識や経験をお互いに補える環境です。
Q3 仕事でつらい時、どうやって乗り越えている?
悶々と考えていても答えが出ない時は、寝てしまいます。目が覚めると「思ったより小さいことだったな」と思うことが多いです。または、ママ友など仕事と関係のない友人と一緒においしいものを飲んで食べて、仕事とは関係のない子どもや学校の話をして盛り上がっています。
Q4 プライベートの過ごし方は?
子どものスイミングの観戦に行きます。一緒にスポーツや料理をすることも多いです。ボルダリングやハイキングはノルウェーならではだと思います。平日は仕事が終わったらすぐに帰宅して、子どもとの時間を過ごすようにしています。
Q5 夢は?
子どもたちとメンバーの成長をこれからも見守っていきたいです。そして私自身も、新しい仕事や新たな責任にチャレンジし続けていたいですね。より良い組織・チームづくりに取り組んでいけたらと思います。
とある1日
- 6:00
- 起床。メールチェック、朝食準備・お弁当作り
- 7:30
- 子どもたちを送り出す
- 8:00
- 出社。勤務時間中は、社内外との打ち合わせがメイン
- 16:00
- 退社
- 16:30
- 子どものお迎え
- 17:00
- 帰宅
- 17:30
- 夕食準備と夕食。曜日によって子供の習い事送迎等
- 18:30
- 家事をしつつ子どもの宿題をサポート
- 21:00
- 子どもの就寝後、メールチェック、残務整理
- 24:00
- 就寝