高校生の頃から貧困や人権などの社会問題に関心があり、学生時代、オーストラリアの大学で国際関係学を学びました。当時は漠然と国連や外務省など公的機関で働きたいと考えていましたが、その時出会った教授の言葉が私のその後のストーリーを決めたといっても過言ではありません。「本当に世界の社会問題を解決したいと思うのなら、企業に飛び込むべきだ」。これまで社会が経済発展を遂げてきた一方で、環境汚染や人権問題など社会が抱える課題は利益追求を第一に考えてきたビジネスと密接な関係があり、解決には企業の経営のあり方を変えることや資金も必要であると気づかされました。企業の経営を通じて取り組まなければ世界は変わらない……。今注目を集める「サステナビリティ経営」という発想です。私にとって、まさに天啓ともいえる言葉でした。
そして私は帰国し、自動車メーカーに就職しました。自動車業界を選んだ理由は、世界にまたがる膨大なサプライチェーンを有しており、経済発展を支え地域社会への影響力が大きく、そういった事業環境の中で社会課題の解決に貢献していきたいと考えたからです。12年間、経理・財務やサステナビリティ推進などコーポレート部門を中心に働きました。サステナビリティを推進する部署では、自動車業界が関係するさまざまな社会課題を学ぶ機会に恵まれましたが、問題を個々に対処するだけではなく、社会課題解決に貢献しつつ、会社の持続的な成長を同時に追い求めたい。すなわち経営の在り方そのものに「サステナビリティ」という概念を根付かせたいという思いが強くなり、2019年、住友商事にキャリア入社したのです。